種の戦略(飛ばす)

カテゴリー: 雑感いろいろ | 投稿日: 2007.6.10

皆さん、こんばんは。
一度根を生やすと移動することができない植物たちですが、一生の中で唯一移動できる時代「種」のお話し。
植物たちが子孫を残すためには、根元に落とすより、何らかの方法で遠くに運ぶほうが有利です。
自分の根元は日陰であったり、同じ場所に群生すると水や養分を奪い合ってしまいます。
もちろん、群生することで有利な場合もありますが、ある程度拡散したほうが有利です。
種を運ぶ手段として、飛ばすという方法があります。今回はこの飛ばす工夫をした種を紹介します。

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(写真をクリックすると少し大きくなります)

上の写真は種飛ばしの名人「たんぽぽ」の種です。以前にもこれは紹介したことがあります。
ふわふわした冠羽と下に伸びたステムの先の種のバランスが見事で、パラグライダーのように安定していて、上昇気流に乗れば、相当遠くまで飛んでいきます。
種の部分を取ってしまうと、重量バランスが不安定になりうまく飛ばなくなってしまいます。
タンポポは小さな草本ですが、木本にも種を上手に飛ばすものがあります。
以前はアフリカンチューリップを紹介したことがありましたが、今回はジャカランダです。
ハワイ島の春の風物詩といっても良いほど、各地で美しい花を咲かせてくれますので、知っている人も多いはずです。早いものは2月から咲き始め、遅いものは6月まで咲いています。標高や降水時期などによって、花のピークが島内でもまちまちです。
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左がジャカランダの花です。藤色というか紫のベル形の花が房状につき、満開だと色違いの桜のようにも見えます。花の形はこんなに違うのに、葉を落とし花が咲く感じが似て見えてしまうのでしょうか。
中央が種のびっしり詰まったさやです。まるで二枚貝のような姿です。それを開けてみたのが右の写真です。
種の散布は、隙間から風と重力で種がひらひらと少しずつ飛んでいきます。この種を拡大するとセロファンのような膜の中央に種が貼り付いているような感じです。
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左がジャカランダの種のアップです。茶色みを帯びた透明の膜の中央が種本体です。中央はそれを透かしてみたものです。何やら血管ような、昆虫の翼の翅脈(しみゃく)のようなものが見えます。昆虫の翅脈同様膜を強化するためのものでしょう。右がよく似ているアフリカンチューリップの種です。さすが同じノウゼンカズラ科。よく似てます。風に乗り、ひらひらと中を舞い、遠くに遠くに生息地を広げて生きます。
アボカドのように、種を大きくしてでも養分を蓄えるものと、ジャカランダのようにたくさんの軽い種を飛ばし、新天地で成功しようとするものがいるようですね。
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試しに種を蒔いてみました。ものの数日で発芽しました。
左の写真が新芽ですが、大きなハートのような形の葉が子葉で、発芽時にパカッと開く双葉です。
日を受けると葉緑素ができて光合成を始めます。小さな葉が幼芽が開いた本当の葉です。子葉は葉が開いて育つまでの間だけ見られる葉です。
中央の写真が発芽後数日ですが、1ヵ月後には右の写真のようになってしまいました。
まるでシダの鉢植えのようです。すごい繁殖力だなと感心しました。
まだ種を飛ばす植物は続きますが、長くなってしまいましたので、また後日に続きをアップします。
では、おやすみなさい。